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みんなの一歩 じゅうさんにんめ 〜押川 蓮斗さん〜

こんにちは!鹿児島県共生・協働センター、通称ココラボの情報発信を担当しておりますパッションです!

 

ココラボでは『みんなの一歩』と題して、鹿児島県内で活動をされている方に活動の経緯や活動に対する想いなどを記事にまとめて、ココラボに入って左手すぐの壁際に展示しています。

 

じゅうさんにんめ(13人目)となる今回は、鹿児島県鹿児島市桜島で活動されている押川蓮斗さん(以下、おっしーさん)にインタビューしました。皆さんに、鹿児島でとても素敵な取り組みをされている方を知ってもらうとともに、皆さんの活動を始める小さな後押しになると嬉しいです。

 

みんなの一歩とは?

鹿児島県内には、多種多様な方々が様々な活動をされています。そしてその活動に至るまでの過程も様々です。

そこで『みんなの一歩』では、鹿児島県内で活動をされている方がどんな想いで活動をしていて、その活動を始めるそもそもの最初の一歩は何だったのかをインタビューしていきます。

 

みんなの一歩が、皆さんの活動を始める一歩の小さな後押しになるように、そんな想いで始めました。

 

みんなの一歩 じゅうさんにんめ 押川 蓮斗 さん

 

-プロフィール-

 

鹿児島県日置市伊集院町出身。大学時代に福岡・海外でデザインを学び卒業後、東京の広告代理店へ就職。大学時代のソーシャルデザインへの関心、桜島という火山と暮らしが共存する島に興味を持ち、帰省を決意。前職を生かした広告プランやデザイン制作での地域事業支援や、桜島観光産業振興、特産品のブランディングなどに取り組む。

桜島から鹿児島を変えていきたい

パッション:

おっしーさんは伊集院出身ということですが、桜島に来る前はどんなことをされていたんですか?

 

おっしーさん:

大学ではデザインについて学んでいました。九州大学の大学院までいって、その後1年間ドイツに留学にも行っていました。その後は東京の広告代理店に入社して、約5年間東京で働いていました。

 

パッション:

そうだったんですね。広告代理店ではどのようなお仕事をされていたんですか?

 

おっしーさん:

これまでずっと右脳を使うデザインをやっていたので、そうではない部署にいきたいと思って、左脳を使う、統計学を扱う部署に行きました。具体的には、マスメディアの投資対効果をクライアントに提案、説明するプランナーをしていました。

 

パッション:

広告代理店にも様々な職種がありそうですが、デザインなどこれまで学んだことを活かしたいという気持ちはありませんでしたか?

 

おっしーさん:

これまでクリエイティブ側のことばかりをやっていたから、そうではないことを知って、経験しないといけないと思っていましたね。でも、学生と社会人のギャップもあるし、全く未知の領域だったので、てんやわんやでした(笑)

 

 

パッション:

大変そうです(笑)

東京でバリバリ働かれていたおっしーさんが、鹿児島に戻ってこようと決めたきっかけは何だったんですか?

 

おっしーさん:

元々は海外志向だったんです。タイにも支社があって、異動のチャンスがありました。当時タイの支社長と本音で話をした時に、僕の話も真っ直ぐ受け止めながら「本当にそれがタイでできるのか?あなたは本当は何がしたいの?」と言われたんです。それが頭をカチ割られた瞬間でした。少し立ち止まって、自分が本当にしたいことが何かを考えたんです。やっぱり地域に入ってやっていきたいと改めて思いました。そこからのアクションとして、鹿児島市の関係人口の事業である「かごコトアカデミー」(※)に参加しました。

 

(※)かごコトアカデミー

https://www.city.kagoshima.lg.jp/kouhousenryaku/cangokoto/first.html

 

それからはとんとん拍子で、桜島がやりたいことに近いかもなと思って、NPO法人桜島ミュージアムの代表福島さんとつながり、桜島の地域おこし協力隊募集を知って、桜島移住がリアリティを持ち始めました。働いている会社で、地方案件に携われる部署にいくことも考えましたが、結果桜島の地域おこし協力隊が決まり、桜島へ移住しました。



パッション:

桜島がやりたいことに近いかもと仰っていましたが、当時のやりたいことってどんなことだったんですか?

 

おっしーさん:

やりたいことは、鹿児島のブランディングでした。鹿児島がすごく良い所って、やっぱり外に出て思ったけど、そこをどうやって伝えていくか、どうやって分かってもらうかが課題だと思います。それができれば鹿児島ファンをもっと増やせると思っています。それにはシンボリックな桜島がもっと有効活用されるべきだと。「そういうポテンシャルはあるんだけどね」と何十年と言われ続けている現状だったので、桜島だとなにか面白いことができるかもしれないし、桜島から鹿児島を変えていけたら良いなと思ったんです。

 

桜島でやる意義を考える

パッション:

桜島の地域おこし協力隊としては、どんなことをテーマに活動されてきたんですか?

 

おっしーさん:

フリーミッションだったので、僕は観光のことについてやりたかったんです。やっぱり地域の観光産業が盛り上がらないと、地域の暮らしは成り立っていかないことは、社会の背景的にもみえていました。また、広告代理店で経験したプロモーションとか、外向けにどう発信するかを、観光であれば活かせることが多いとも思いました。

 

単純に、自然が好きなので、桜島の観光に関われることは人生豊かだと思っていました。

 

パッション:

おっしーさんの中で、自然とか地域を意識するようになったきっかけはあったんですか?

 

おっしーさん:

原体験は、宮崎県都城市にある祖母の家でした。よく子どもの時に兄弟で遊びに行っていました。畑が盆地地帯に広がっていたり、霧島連山が見えたり、水も美味しくて、ご飯も美味しい。祖母は、畜産業を営んでいて、山にある豚舎に連れて行ってもらったり、野山で遊んでいました。それがすごい素敵だと思っていて。

 

でも成長すると素敵な景色がどんどん廃れていって、公園がなくなっていたり、いつの間にか豚舎もなくなっていたり。その出来事を思い返して、大切な風景を残せるように支援できる人になりたいと学生時代から考えていました。だから地域で、素敵な風景を残すような活動に貢献できる人になりたい、仕事をそこに絡めることができれば、やりがいをもってできそうだと思っていました。



パッション:

素敵な体験だったんですね。

そんな思いを達成するために、一番最初に取り組んだことは何でしたか?

 

おっしーさん:

協力隊に入隊して半年ぐらいの時に、桜島ナイトウォークを開催させてもらったのが、大きな出来事でした。コロナ期間中で、イベントを復活させるのはどうなのかという話もあったけど、元々桜島は、夜間歩行訓練と言って、夜に災害が起きた時に避難できるように訓練の位置づけで、夜に歩くことが学校行事的に始められていました。

 

それが鹿児島市に合併する前に、桜島の青年団の活動でよりイベント化されたけど、合併と同時に青年団は解体され、その後は市の有志の職員が集まって頑張りたい人だけが頑張っていました。でもこのまま続けるのは大変ということで終わりを迎えていた時に、僕たちが入ってきて、復活させたいという地域や参加者からの声もあったので、やらせてもらいました。

 

コロナ期間中だったけど、最大300人集めますと言って、本当に300人に来ていただきました。

 

パッション:

すごいですね!!実際にやってみてどうでしたか?

 

おっしーさん:

イベント自体は大盛況で、成功して良かったねとなったけど、運営としては色々考えさせられて、良い学びがありました。

 

イベントをやることって運営に相当負担がかかるし、だからやめていた部分もあるんだけど、「なんでこんないいものをやめてしまうんだろう、やりましょう!」と僕の独りよがりな考え方なのではないかと思うくらい、地域の人たちにたくさん動いてもらわないといけないイベントでした。

 

運営の協力者の心持ち次第だったりもしますが、そこを無理して協力してもらうのは、ちょっと違うのかもなと思わせてくれました。

 

パッション:

考えさせられる、大事な視点ですね。

 

おっしーさん:

外の視点しか持ってなかったけど、より地域目線を持てたというか、ハッとさせられたイベントでした。

 

外の視点からすると、イベントをやってもらうと嬉しいし、参加者も外から来る人が多いから嬉しいってなるけど、地域目線からすると、来てくれるのは嬉しいし大歓迎なんだけど、運営が大変だったり、地域が迷惑被ることや地域になにか恩恵あるんだっけ?みたいな話もあります。

 

地域一丸となって、魅力をPRすることが思い描けていれば、そんなことは起きないけど、僕自身が外から来て、勢いでやってた感が否めないから、この在り方は良くないのかもしれないと思って。良いイベントの理想ってこういうことなのかもしれないと考え方が変わり、学ばせてもらいました。そこからは、イベントするにしても、より地域でやる意義を考えるようになりました。

 

パッション:

現在、桜島ナイトウォークはされているんですか?

 

おっしーさん:

お休み中ですね。個人的には4年に1回ぐらいやれば良いかなと思っています。何のためにそのイベントをやるのか考えた時に、地域の行事としての文化や歴史を残していくことがやる意義だと思っているので、サイトも作成しているし、ノウハウもあるので、いつでも受け渡せるし、開催はできる状態なんです。そういう意味では、維持・保存の役割は達成できているかなと思っています。

 

地域の人たちからやりたいと声が上がったり、次の協力隊メンバーが地域の方々と一体となって作り上げるためにやりたいんですと思いを持った人が揃った時に、やれば良いかなと思っています。

 

代わりに、運営が4人いればできるように効率化した、地域版のウォーキングイベントに縮小してやっています。地域の伝統や文化を守っていきたいという地域の課題や思いはあるので、運営も大変ではなく、参加者も楽しい活動に昇華しています。規模は縮小されましたが、それぐらいの方が実はみんな幸せだったりするのかもしれません。

 

貴重で豊かな自然の中で、家族と幸せに暮らす

パッション:

現在、おっしーさんが特に力を入れている活動はなにかありますか?

 

おっしーさん:

2年前からサイクリングツアーガイドをしています。桜島をどうやってもっと魅力的な観光の島にするかは大きな課題でした。観光事業の中でも、観光体験づくりには大きな課題があって、事業者目線と地域目線の課題がありました。

 

事業者目線では、お金にならずに事業にならないという課題と2次交通の課題。これまで桜島ミュージアムで火山ガイドを頑張っていたけど、事業性が成り立たなくて衰退していきました。地域目線の課題では、桜島の大きな観光スタイルは港周辺を回って帰るだけだったので、滞在時間も少ないし、地域にあまりお金が落ちていないことでした。そこをサイクリングとインバウンドを掛け合わせて解決していこうという事業です。

 

 

パッション:

実際に2年間やってきてどうでしたか?

 

おっしーさん:

まさか、桜島にきた当初にサイクリングガイドになるなんて思っていませんでした(笑)身体動かしたり、友達と自転車でツーリングをしたことはありましたが、未知の領域で模索しながらやってきましたね。

 

でも今では、トリップアドバイザーのサイトで僕のサイクリング体験がNo.1の口コミにまでなりました。鹿児島の観光体験の中で、一つの目玉としても捉えてもらえるようになってきたことは感じています。他にも、観光ツーリズムやサイクルツーリズムの観点で、協議会の委員会に参加したりしています。

 

パッション:

桜島から鹿児島を変える!に少しずつ近づいているんですね!

 

おっしーさん:

自転車を一つのツールとして、鹿児島の魅力をいろんな形で繋げていけたら良いなとずっと思っていて、それが桜島から起こせると機能的で効果的なのかもしれないと思っている部分が一つずつ形になっている気がして、可能性を感じているところです。

 

 

パッション:

おっしーさんが最初に踏み出したなと思う一歩って何がありましたか?

 

おっしーさん:

インバウンド向けのサイクリングガイドのモニターツアーを一昨年に始めたのは一歩でしたね。英語でのガイドは、すごく緊張しました。シナリオを日本語で考えて、英語に訳して、その英語を自分の中にすり込ませる。都度英語を勉強したり、自分のスマホでガイドを録音しては車の移動時間に流してセリフを覚えていましたね。最初のモニターツアーは、頭真っ白になりながらガイドの案内と安全管理でてんやわんやでした(笑)

 

パッション:

カタチになるまでは地道な努力がたくさんあったんですね。

おっしーさんは、2025年の3月で地域おこし協力隊の任期を終えるわけですが、協力隊の期間を振り返ってどうでしたか?

 

おっしーさん:

大変なことも多かったけど、やりがいもあって、経験を得れたことも多かったです。4年前の自分とは違う感覚というか、今はこう思えると感じられるぐらい成長させてもらいました。

 

他にも信頼や信用は得られているんだろうなというのはあって、チラシづくりをお願いされたり、頼ってもらえることは、ありがたいことですし、今までやってきた成果だと思っています。

 

パッション:

これまでおっしーさんが築き上げてきた成果ですね!

最後にこれから描いていきたい未来について聞かせてください。

 

おっしーさん:

鹿児島や桜島の貴重で豊かな自然が残っていて、その中で家族と幸せに暮らすことです。豊かな暮らしがしたくて地域に移住したこともあるし、豊かな景色を残していけたら良いなと思って活動しています。でもその自然を享受できないまま暮らすのは本末転倒なので、やっぱり家族と笑顔で美味しいご飯を食べて、自然の中で遊んで良い暮らしをする。大雑把だけど、そういう感性や時間を大切にできる暮らしや仕事ができたら良いなと強く思っています。

 

おわりに

 

東京でのキャリアを経て、自分自身の原点や想いと向き合いながら桜島と出逢い、地域のために挑戦を続けるその姿が印象的でした。地域がやる意義を見出して、運営に負担がかからないように小さくも長く活動を続けられている姿勢にも感動しました。観光やイベント、サイクルツーリズムなどの視点から地域を見つめ直し、「豊かな自然の中で、家族と幸せに暮らす」というシンプルで温かい未来を目指す押川さんの歩みは、まさに“みんなの一歩”にふさわしいものでした。